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今回は、2024年に竣工したハロンズ岩見沢改修工事について、設計の考え方をまとめておきます。

法規制から生まれた、二つの投票所
当初、投票所は200㎡を超える一室として計画されていました。しかし面積が200㎡を超えると、建築基準法上の用途の扱いが変わり、手続きや耐火構造への要求が増え、予算への影響も大きくなります。行政側と協議を重ね、投票所を200㎡以下に抑えれば問題がないことを確認し、計画を投票所Aと投票所Bの二室に分けることにしました。
ただし、法の上では分けても、運営の上では分けたくない。この矛盾への解が、透明な6連引き戸です。安全性のため素材はガラスではなくポリカーボネートとし、閉めていても視線が抜け、壁の大部分を見通すことができます。普段は開け放して使うことで、有効開口も大きく確保しました。
柱と引き戸を、同時に消す
開いた戸を収める戸袋のスペースは、左右どちらにも取れませんでした。そこで着目したのが、二室の境のちょうど真ん中に立つ既存の柱です。引き戸1枚の幅をこの柱の幅に合わせ、柱の陰をそのまま戸袋として利用しました。壁の位置を柱際に調整し、戸が6枚でちょうど納まるよう当初から寸法を計画。図面だけでは伝わりにくい意図を、現場で監督や建具職人と打ち合わせを重ねて実現しました。邪魔だった柱と、開いたはずの引き戸が、同時に視界から消えます。既存建物の制約を、寸法の一致によってデザインに変えた部分です。

排煙のために生まれた、厩舎の屋根
内装の「厩舎」のモチーフは、意匠の出発点ではありません。平面計画上、この位置には投票機械を収めるバックヤード室が必要でした。その壁には天井付近に排煙窓があり、投票所側で有効に使わなければなりません。そこで室内に架ける屋根を排煙窓の半分より下に抑え、天井と屋根の間に空間をつくることで、排煙窓を有効に働かせました。屋根形状が機能から必然になったところで、仕上げを厩舎のモチーフとし、木製の壁で包んでいます。

床に仕込まれた「道」
床のタイルカーペットは、砂と砂利の色で貼り分け、「道」のようなパターンをつくっています。その道は各出入口へ、券売機へ、トイレへと分岐して続く、無意識の動線誘導です。大半の利用者は気づきません。それでよいと考えています。気づかれないまま人の動きを助けることも、設計の仕事の一つだからです。
ルーバーと質感
VIPルームの天井にはルーバーを、投票所Bの壁には縦ルーバーを用いました。壁のルーバーは、建具の横に残る小さな壁を見せないための処理でもあります。見せたくない部分を、消すのではなくデザインとして処理する。壁の一部にはコンクリートのような質感を持つフレキシブルシートを用い、色ではなく質感によって空間の表情をつくりました。ビニールクロスによる色の変化よりも、素材の質感の方が、壁は力強くなります。

条件の帰結としてのデザイン
この改修では、意匠から決めたものはほとんどありません。法規制、予算、既存の柱、排煙窓、運営の要望。その一つひとつに理由のある解を重ねていった先に、厩舎の屋根や馬にまつわるモチーフが、最後に姿を現しました。形態は設計者の恣意ではなく、複合的な要因が導いた意味のある形であるべきだ——それが私たちの考える「建築デザイン」です。
なお外壁は、既存を再利用し、劣化補修と塗り替え程度に留めてコスト調整をしています。派手な色に見えますが、馬につながりのある意味合いを持たせた色味になっています。

■作品データ
所在地:北海道岩見沢市
用途:場外勝馬投票券発売所(改修)
構造:鉄骨造2階建て/改修面積 約590㎡
竣工:2024年
設計・監理:デイズ建築設計事務所
関連記事:現場での納まりについては「現場監理」(2024年10月26日)にも書いています。